人身取引とは「搾取」を目的として加害者が被害者を自分の支配下に置くことです。それは遠い国で、犯罪組織が行うような犯罪だけではなく、誰もが被害者になりえる、また誰もが加害者の立場にもなってしまうごく身近な犯罪です。そして、スマートフォンやパソコンが1つあれば、どこでも被害に遭う可能性があります。
ごく普通の子どもが自分の部屋で今まさに加害者から「裸の写真を1日10件送れ、さもなければお前の学校と友人・知人(SNS上の繋がりを知られている)にばらまく」と言われ、言いなりになっている可能性だってあるのです。
実際にこういった相談がゾエに来ています。
「子どもたちを守る活動のために私たちができることは何ですか?」とよく支援者の方が聞いてくださることがあります。募金やゾエの啓発コンテンツ等をシェアすることも防止につながります。
しかし、今回特記したいのは、大人が子どもの心にかかわることです。
犯罪者は「グルーミング」といった手法を使い、悩みや不満を抱えている子どもたちを手なずけて孤立させ、心を操っていきます。
「同世代の子はどうせ君のこと理解できないよ」
「周りの子はもうとっくの昔に経験済みだよ」
「これはいいことなんだよ」
「大好きだよ」
など言われ、子どもは少しずつ相手の言葉に耳を傾け、こんなに自分のことを気にかけて、いつも相談に乗ってくれている相手だからと、少しずつ信頼していきます。そして相手の要求に従っていくうちに、脅され、搾取の関係から抜け出せなくなってしまいます。
犯罪者は私たちの子どもたちを狙ってきます。
加害者は子どもに、自分は孤独で、誰からも大切にされていない、自分の価値を高めるには性的な写真を撮ったり、行為をすることだと信じ込ませます。
ですから、子どもの人生にできるだけ普段から関わってあげてください。日々どんな小さな会話でもいいのでコミュニケーションを取り、気にかけていることを示し、あなたがそばにいること、必要なときに相談できることを伝えてください。
彼らの存在がどれほど尊い価値があるのか伝えてください。
居場所が欲しい子どもたち、性的なことに興味があるけど学校でも家でも聞けないから知りたいといった好奇心を抱く10代の子、お金が欲しい子は簡単に騙されてしまいます。また、そういった無垢な子どもの性質に付け込んで、相手を騙して児童性虐待画像をどれだけ多く得られるかゲーム感覚で加害に及ぶ犯罪者でSNSやネットはあふれています。
こういった被害に遭わないために、子どもたちに電子機器の使用ルールを設けることは大前提ですが、それと同時に、子どもが「自分は一人じゃない、大切に思われている、私は価値ある存在だ」と心から信じることができれば、そういったグルーミング犯罪者の甘い言葉に騙されることは少なくなります。
子どもの人生にかかわること、親からの愛情を子ども自身が感じ、理解できるように伝えること、これは人身取引の最も効果的な防止方法のひとつです。
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